買収防衛策で殻に閉じこもる。
その半面で、本来は日本の将来を支えるべき新しい企業が育たない。
東証マザーズなどの新興株式市場は、ライブドァ事件や村上ファンド事件以来、惨憎たるありさまだ。
このような閉塞的状況から抜け出すきっかけは、残念なことに、どこにも見出すことができない。
円安の進行に歯止めをかける可能性がある唯一のものは、日本人の海外における購買力の低下である。
最近イギリスを旅行すると、ホテル代や食べ物代が高くて驚いたという話を聞く。
ヨーロッパに駐在して円で給与が決まっている人たちは、生活が苦しくなっているとも聞く。
本来は、こうした購買力の変化が為替に影響するはずだ。
旅行者の経験は一時的なものだし、外国旅行が高過ぎるなら、しなければよいだけの話だ。
海外駐在の人びとにとって問題は深刻だが、彼らの声は国内政治には届かない。
それに、これらの人びとは国民全体からすると、それほど大きな比重を占めるわけではないので、いずれにしても政治的な圧力にはなりえない。
購買力が低下しているのは、じつは海外旅行者や海外勤務者だけではない。
円で労働の対価を得るすべての人びと、円で資産を保有するすべての人びとの購買力が低下している。
この変化は目に見えるかたちでは表れないので、問題であると意識されない。
ところが、実際には、逆に批判の対象となっているのである。
本来であれば日本国内の資本形成に充てられたはずの資金が外国に流出したことは、日本国民から見れば損失だ。
流入国の金利上昇を抑えたのだから、高金利国からは感謝されてしまうありさまだ。
地価がやっと上昇した2007年の公示地価が16年ぶりに上昇した。
この傾向は、2008年も続いた。
このため、「やっと資産デフレの時代が終わった」という論調が一般的だ。
こうした考えは、重大な点を見逃している。
「金利が低ければ地価が上がるのは当然」ということだ。
これについて、仮想例を用いて説明しよう。
ここに、年間1億円の利益を確実にもたらす商業施設があったとする。
この価値はいくらだろうか?調達資金は全額を借入れで賄うとする。
金利が年利10%であれば、価値は10億円ということになる。
なぜなら、毎年の利子支払額は1億円で、施設からの利益でちょうど賄えるからだ。
金利が1%になると、右と同じ計算で、価値は100億円になる。
このように、金利が低下すれば、不動産の価値は自動的に上がる。
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